ドン・ルイス1世橋

Thursday, May 12, 2016


高いところがそれはそれは苦手なので、現在居住しているマンションは2階の部屋。前の前の部屋は5階で、その後は1階。1階の部屋はとても落ち着いた。地面に近いという安心感。でも北向きの部屋は喧嘩が絶えず、引っ越して早々に某タコ焼き店のタコ焼きをシュートして天井にソースの染みがついた。
そういえば昨年幼稚園の遠足以来ぶりにマリンタワーの展望台に登ったのだが、これがえらく揺れる。あまりに怖かったものだから、中心部分になるべく近い壁に手をついてカニ歩きで一周して、さっさと地上に降りた。できればもう2度と登りたくないが、残念なことになぜかマリンタワーの展望フロア入場券が手元に2枚もある。できれば有効期限が過ぎてからそっと思い出したい。

横浜から飛んでポルトガルはポルトでの出来事。
ドウロ川にかかるドン・ルイス1世橋というエッフェルの弟子が設計した橋がある。エッフェル塔を思わせる、大きくて美しい橋。ひとりでふらふらしていた私はなぜかこの橋を徒歩で渡ろうと思いついた。
ドン・ルイス1世橋は2層に分かれていて、下の層は車と歩行者、上の層は歩行者とトラムが渡れるようになっていたように思う。
当初下の層から対岸へ渡ろうと思っていたのだが、張り切って坂道を登っていたら上の層まで来てしまった。また下るのも面倒なので、そのまま渡ることにしたのだが、これがとんでもない失敗であった。
まず、ドウロ川というのはスペインを上流に持つとてつもなく大きな河川である。当然川幅も広く、私が渡ろうとした場所はおそらく300mほど。そしてドン・ルイス1世橋の地上高がまた高い。その高さ45m(Wiki調べ)。遮るもののない大きな川、高所、となれば当然風が強い。そして私は高所恐怖症であることをすっかり忘れていた。

渡り始めて10mほどで「私は高いことろが怖かったのかもしれない」とようやく思い出した。歩行者の通路は幅1mもない。そのすぐ横をトラムがスピードを落とさずに通る。両肩を揺らす風の強さに頭がクラクラする。当然のように足元から下の川はよく見える構造。
欄干を掴みながらゆっくり進む私を2人の爺さんが追い越してゆく。「ちょっと待って!私と手を繋いで!」と20代そこそこのへっぴり腰の女は言えるはずもなく、やがて橋の中央部分に差し掛かる。
中央部分は恐ろしいほどの強風だった。意地を張らずに引き返せばよかったと心底後悔したが、中央まで来たら残りは半分。「ドン・ルイス1世橋は怖い」歌を作って泣きながら歌い、やがて対岸へ辿り着いた。最後の5mはきっとものすごいスピードで走った。岸に辿り着いてしばらくすると両腕にじんましんが出た。きっと恐怖心に因るものだったのだろう。動悸がおさまるとじんましんも消えた。

今年は再びポルトガルへ行く。ポルトも検討していたのだが、間違ってリスボンのホテルを全日程前払いで押さえてしまったので、残念ながらドン・ルイス1世橋を渡ることは出来ない。ちょっと惜しい気もするが、あの時の恐怖を思い出すとこれで良いのだと心から思う。

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