うなぎの味

Tuesday, November 06, 2012

先週、母とうなぎを食べに行った。麹町の老舗。以前食べに行ったのが、私の成人式用の振袖を買いに呉服店へ行った帰りだったと思うから、もう10数年振りのこと。うなぎの皮の印象が無い、おいしいうなぎとだけ記憶していた。
待ち合わせの時間が少し遅い、と言っていた割には私のほうが先に店についた。ひとりで鰻屋に入るのは少し緊張した。席について、うな重の松竹梅を眺めていると、ほどなくして母が入ってきた。
「外食するなら、美味しいものだけ」というポリシーのあるらしい母は、いつもこれよ、と、うな重ではなくうな丼と赤出汁を慣れた様子で注文する。奢ってくれるというので、冷酒も一合。うざくも食べたかったけど、ちょっと遠慮をしてしまった。

冷凍庫に入れておいたブランデーくらいのとろみのある冷酒と、ふっくらとしたうなぎはよく合う。粘り気の少ない、小さなつぶのご飯がうなぎをきちっと受け止めていた。うなぎは、私の記憶どおり、皮の食感を感じさせること無く喉の奥に吸い込まれてゆく。
そして、山椒が素敵だった。薬味入れの小さな壺を開けると、ふんわりとした山椒。色も白い。たぶん山椒の皮を取り除いて中身だけ使用しているのだろう。粉のようにきめ細やかで香りがきれいだった。

母とはあまり会話は弾まない。いつものことだ。ごく普通の家族だと思うけれど、あまり相性がいいほうではないと思うから、仕方がない。しかし母はよく喋る。良くも悪くもない、まあまあの時間を過ごした。

帰路、うなぎにまつわる色々なことを思い出した。記憶の背景に結構な確率で私はうなぎを食べている。この日の母とのうなぎも何らかの背景になるのだろうか、などと思って少し憂鬱になる。

次は誰とうなぎを食べるのだろう。

You Might Also Like

0 comments

Like us on Facebook

Instagram Images

Subscribe